石黒萌子アーティストブック 『Notation(s)』 KYOTOGRAPHIE PHOTOBOOK FAIR 2026で先行販売いたします。
©︎石黒萌子 / Notation(s)
本作は、作家が日常的に撮影している風景に対して抱く感覚や想像を、図形を用いて視覚的に記譜することで、作家自身が感覚を整理し、理解していくプロセスを読者が辿ることを試みたアーティストブックです。
2024年には「PHOTOBOOK AS OBJECT」ワークショップに参加し、写真集の制作に取り組みました。抽象的な感覚を起点に、構成を幾度も組み替えながら試行を重ねるなかで、曖昧だった気配は少しずつ輪郭を帯び、やがてかたちとなって定着していきました。
外観は一見すると写真集とは言いがたい、白黒の図形が複数配置された白い本として立ち現れるように制作されています。ページは片観音開きとなっており、外側に記譜図、内側に写真が配置され、観音(ページ)を開くことで初めて写真を見ることができます。
直感的に受け取られやすい写真というビジュアルを一度隠し、図形(記譜図)という構造化されたビジュアルを前面に出すことで、風景を一歩引いた視点から捉え直すことを試みています。
本編は、100枚の写真と、それぞれに対応する100枚の記譜図によって構成されています。
この記譜図は、誰でも描けるような60個のシンプルな図形の中から該当するものを選び、配置することで、1枚の写真に対して1枚ずつ作られます。ただし、その組み合わせは絶対的なものではありません。写真を見る人によって、あるいは同じ人であってもそのときの状況や状態によって、記譜図は異なるかたちをとり得るものとして位置づけられています。
この記譜図は作者自身が感じ取った不安定さやおもしろさ、ふと湧き上がる疑問、その背後に潜む気配といった、言葉に回収しきれない、時に抽象的な感覚を視覚的に記録するためのツールとして用いられ、個人的な感覚を他者と共有できるかたちへと変換することを試みています。
かけられたカバーも、一般的な仕様とは異なる構成をとっています。
30枚の薄い紙を重ねたカバーが本体を覆っています。カバーの袖部分には、図形と名前、そしてその図形が用いられている写真番号が羅列され、冊子のように読むことのできる構造となっています。
また、本作は内容はすべて同一でありながら、100冊それぞれに異なるタイトルが付けられています。各タイトルは、本編に収められた100枚の写真のうちの一枚を指し示すものであり、同じ内容をもつ本に対して、100通りの異なる入口が与えられる構成となっています。
記譜図と写真を交互に見ることになる読者は、それぞれの図形が何を表しているのか、巻末の図形一覧や30枚重なったカバーに書かれた1つずつの図形を参照しなければ正確に読み解くことはできません。そのように少しずつ辿っていく過程そのものが、他者の感覚を理解することの難しさと、その奥行きを示しているとも言えるでしょう。
本書は、2026年5月9日(土)〜10日(日)に開催されるKYOTOGRAPHIE PHOTOBOOK FAIR 2026にて先行販売いたします。本フェアが、実際にお手に取ってご覧いただける初めての機会となります。
フェア期間中は、その場でお渡しが可能です。また、関連トークイベント「構造としてのアーティストブック」を、5月9日(土)13:00〜14:00、同会場で開催いたします。
また、本作に関連して、石黒萌子による写真展「Notation(s)」を2026年6月13日(土)から21日(日)までReminders Photography Stronghold Galleryにて開催いたします。こちらもぜひご期待ください。
オンラインでの販売は、後日ご案内いたしますので、今しばらくお待ちください。
ある風景を目にしたとき、それが尽きることのない想像を掻き立てることがある。
この本では、私自身が風景をどのように受け取り、そこからどのような感覚や想像が生まれているのかを、読者と共有しようとしている。
私が日常的に撮影している風景を振り返ると、そこにはいつも、視線や思考がわずかに引き止められる瞬間が含まれていることに気がついた。風景がなめらかに通り過ぎず、知覚のどこかで小さく引っかかる。
それは、風景と私のあいだに生じる、ごく微細な摩擦のようなものだと思っている。
外の世界と内側の感覚が完全には重ならず、わずかなずれや抵抗が生まれる。その感覚こそが、想像を立ち上げるきっかけとなり、風景と向き合うための出発点になっている。
この感覚を言葉だけで説明しようとすると、どうしても特定の状況や意味に引き寄せられてしまい、経験そのものをそのまま含めることが難しいように思える。
それは、この感覚が人それぞれ異なるかたちで立ち現れ、非常に幅のある、抽象的なものだからだろう。そこで私は、この感覚を図形によって記譜する手法を取り入れることにした。
この記譜法は、風景を通して感じた不安定さやおもしろさ、ふと湧き上がる疑問、その背後に潜む気配を、視覚的で具体的なかたちへと置き換える試みである。
誰でも描けるようなシンプルな図形を組み合わせ、それを写真と並べて提示することで、抽象的な感覚を、他者と共有できるかたちへと変換していく。
私がこのような風景ばかりを撮る背景には、一種の逃避があるのではないかと感じている。
そのまま受け止めると疲れてしまう情報に対し、想像を差し込むことで、刺激をやわらげているのではないか。空想することは、私にとって、世界との距離を調整するための行為でもある。
ふと目に入る一つの風景でさえ、私にとっては情報量がやや多く感じられることがある。毎日何気なく通っている道でも、道端の木が切られていたり、誰かの落とし物が残されていたり、新しい物が置かれていたり。
そうした小さな変化が、知覚の表面にわずかな抵抗を生む。そのたびに、私は反射的に想像を働かせ、風景とのあいだに余白をつくっている。
この記譜法は、私が風景から受け取ったものを整理し、理解するための手がかりであり、同時に、この本を手に取った人自身が、風景との関係の中で立ち現れてくる想像や感覚に気づいていくための手がかりにもなり得るのではないだろうか。
ー石黒萌子
「Notation(s)」 アーティストブック概要
● 限定100部(エディションナンバー・署名入り)
*それぞれ収録写真の一枚に基づいた異なるタイトルが付けられています。
● 写真、テキスト、デザイン、編集:石黒萌子
● 記譜図:石黒萌子
● 編集協力、企画構成:後藤由美(Reminders Photography Stronghold)
● 英語翻訳協力:Maximilian Kieberl
● 印刷:セントグラフィック株式会社
● 製本:株式会社天白製本紙工
● カバー印刷・制作:石黒萌子
● サイズ:120mm×160mm×20-70mm
● ページ数:202ページ+蛇腹折図(図形解説)
● 重さ:約420g
● 言語:日英併記
● 価格:14,300円(税込・送料別途)
©︎石黒萌子 / Notation(s)
©︎石黒萌子 / Notation(s)
©︎石黒萌子 / Notation(s)
©︎石黒萌子 / Notation(s)
©︎石黒萌子 / Notation(s)
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©︎石黒萌子 / Notation(s)
©︎石黒萌子 / Notation(s)
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©︎石黒萌子 / Notation(s)
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