RPS京都分室パプロルレジデンシー｜2025年秋期アーティスト：イリヤ・ニーダーキルヒナー

09/28/2025

©GESPENSTER / Ilja Niederkirchner

RPS京都分室パプロルにおける2025年秋のレジデンシー作家として、ベルリンを拠点に活動するマルチディシプリナリー・アーティストイリヤ・ニーダーキルヒナーを迎えることになりました。

彼が取り組む長期プロジェクト「GESPENSTER（ゲシュペンスター）」は、家族の歴史を軸に、20世紀におけるドイツとソ連の政治的対立を背景としながら、記憶と沈黙、抵抗と忠誠、裏切りといった物語を問い直す試みです。抵抗の象徴として旧東ドイツで称えられた大叔母ケーテ・ニーダーキルヒナーと、スターリンの粛清の犠牲となったその兄パウル――二人の生の軌跡を起点に、アーカイブ資料、写真、テキスト、絵画的介入を重層的に編み込み、歴史がいかに記憶され、再構築されるのかを探っています。
この作品は直線的な伝記ではなく、断片的で多声的な語りを選び取ることで、歴史そのものが抱える矛盾を映し出そうとするものです。個人史の探究を超えて、神話がどのように構築されるのか、沈黙はいかに世代を超えて持続するのか、そして人は歴史の重荷をどのように生き抜くのかといった普遍的な問いを投げかけます。

RPS京都分室パプロルでの滞在は、この複雑な作品群を編集・構造化するために集中して取り組む貴重な時間となるでしょう。とりわけ、写真とテキスト、アーカイブと芸術的介入といった複数の層を統合し、その最終的な形をフォトブックや展覧会へと結実させるために、RPSキュレーター後藤由美によるメンターシップと、現場での対話が重要な役割を果たすことになります。

©GESPENSTER / Ilja Niederkirchner

©GESPENSTER / Ilja Niederkirchner

©GESPENSTER / Ilja Niederkirchner

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©GESPENSTER / Ilja Niederkirchner

©GESPENSTER / Ilja Niederkirchner

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©GESPENSTER / Ilja Niederkirchner

©GESPENSTER / Ilja Niederkirchner

©GESPENSTER / Ilja Niederkirchner

©GESPENSTER / Ilja Niederkirchner

プロフィール |
イリヤ・ニーダーキルヒナーはベルリンを拠点に活動するマルチディシプリナリー・アーティストで、写真、絵画、コラージュ、インスタレーション、映像、執筆など多様な媒体を横断して制作している。彼の実践は、個人的な記憶と政治的な歴史との緊張関係を探り、集合的な物語と家族の物語が交錯する地点を辿ることに焦点を当てている。
2006年にベルリン芸術大学で舞台芸術を学んだ後、写真に軸足を移し、2017年にノイエ写真学校を修了した。これまでに『The Only Thing That Matters』, 『Greek Dog Days』, 『The Final Snow』といったフォトブックや展覧会を国際的に発表してきた。2024年には後藤由美とヤン・ロッセールが主宰する東京でのワークショップ「Photobook as Object」に参加し、現在進行中のプロジェクト「GESPENSTER（ゲシュペンスター）」に大きな影響を受けている。現在は、ドイツの美術館での展覧会準備を進める一方で、歴史的資料と現代的視点を結びつける新たなフォトブック作品を制作している。

RPSの活動には、レジデンシーとは異なるかたちで作品を世に問う機会もあります。
そのひとつであるグラント公募の締め切りが迫っており、今季からはRPS京都分室パプロルでの展示開催もプログラムに含まれます。
締切は9月30日23時59分（日本時間）です。
詳細・応募方法は下記よりご覧ください。
https://reminders-project.org/ja/grantsjp/

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