松村和彦 写真展「こんなはずじゃなかった」ギャラリートーク開催4/15午後2時から 京都新聞社にて

©︎京都新聞 / こんなはずじゃなかった

間もなくKYOTOGRAPHIEサテライトイベントのKG+が始まります。
展示作家の一人、京都新聞写真記者 松村和彦の写真展「こんなはずじゃなかった」413日に始まり、キュレーションをRPS後藤由美が担当しています。この度、作家とキュレーターによるギャラリートークが15日(月)午後2時から写真展会場の京都市中京区の京都新聞社2階ギャラリーで開かれることになりました。

写真展の主人公で、地域医療に尽力した医師早川一光さんが最晩年に言った「こんなはずじゃなかった」との言葉。2人はこの意味深な言葉にどのようにアプローチしたかを話し、たどり着いた結果を皆様と共有します。アーカイブとして「新聞」を用い、早川さんの写真や資料とコラージュすることで戦後史と個人史を交錯させる試み、闘病生活のルポルタージュ写真の構成、会場で配布する「図録新聞」の制作などについて話します。

お話しを聞いて頂くことで、より展示鑑賞への理解を深めて頂けることと思います。
是非、皆さまのご参加をお待ちしております。
尚、写真展トークに関する情報のアップデートはフェースブックのイベント内にて随時されていきます。

日時:2019年4月15日(月曜日)午後2時〜
会場:京都新聞2階ギャラリー
参加費:無料
登壇者:松村和彦、後藤由美

【展示作ステートメント】
医師早川一光さん(1924−2018)は戦後、京都・西陣で診療所の所長になった。苦しい生活を送っていた住民たちが、自らの健康を守ろうとつくった場所だった。早川さんは患者の立場に立った医療活動を展開。住民や同僚と大きな病院に育てた。高齢化した住民を支えるため、制度化されていない訪問診療や訪問看護などを次々と行った。現在の制度の礎になった。
だが、90歳を超え、血液のがんを患い、「こんなはずじゃなかった」と思った。
意味深な言葉にはいくつかの意味があった。
診る側から看られる側になって、老いの寂しさを実感した。医師の早川さんでも終末期医療を自身で決めるのは難しかった。
昔に比べ、充実したはずの医療、介護に違和感を持った。「病気だけでなく人間全体を診ることが必要」と話していた。システムになった医療、介護に冷たい隙間風を感じ、民主的な社会保障のあり方を問いかけていた。
「困っている人がいても知らんぷりしている」とも言っていた。医療、介護が大きなシステムに依存し、地域の助け合いが薄れたことを心配していた。
超高齢社会で国は在宅医療を推進している。早川さんの問いかけはますます大切になる一方、実現は困難になる。
老医師が亡くなるまで考え続けた問題意識を社会に伝えたい。

©︎京都新聞 / こんなはずじゃなかった

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【新聞コラージュについて】
早川一光さんのフォトストーリー「こんなはずじゃなかった」をつくりながら、何かが足りないと思っていた。「こんなとは何だったのか」。見る人に示すには、早川さんが歩んだ過去を丁寧にたどる必要があると思った。なぜなら、早川さんの「こんなはずじゃなかった」という言葉は、自身の過去に基づき、今の社会を見つめて発した言葉だからだ。早川さんの家族や友人たち、働いていた病院の協力を得て、古い写真や資料を集め、時系列に並べた。しかし、それはまだ個人史だった。社会背景を欠いていた。そこで、同時期の新聞を集めることにした。第2次世界大戦後の混乱、経済発展と社会保障の充実、少子高齢化、過疎化、地域コミュニティの変質。早川さんの個人史と日本の戦後史が絡み合っていった。
人は皆、社会の影響を受け、そして、時に社会に影響を与える。それを伝えるため、早川さんの生き方に影響を与えた終戦の1945年から亡くなった2018年まで1年に1面を選び、そのページと早川さんの写真や資料をコラージュした。新聞は重要な出来事や社会保障に関するニュースなどを伝え、コラージュされた写真や資料にはその現場が切り取られている。
74年分、74枚のコラージュ作品から早川さんが言った「こんなはずじゃなかった」の意味を探る。

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【登壇者プロフィール】
松村和彦
2003年、記者として京都新聞社に入社。05年写真記者となる。写真集に京都の芸舞妓の人生を描いた「花也」(14年、京都新聞出版センター)と、個人的な作品として取り組み、家族の生と死を通じて命のつながりを描いた「ぐるぐる」(16年、自主制作) がある。

後藤由美
Reminders Photography Stronghold共同創設者、キュレーター。アジアを拠点に活動するフリーランスのフォトコンサルタント。プロデュース、キュレーション、フォトエディッティング、リサーチなど、写真に関する総合的なコンサルティングに関わる。重点テーマは、紛争、現代社会問題、人権侵害、女性問題など。World Press Photo(世界報道写真コンテスト)など国際的な写真賞、フォトフェスティバル、イベントのノミネーション、キュレーション及びプロデュースに多数関わる。
KYOTOGRAPHIEではポートフォリオレビューのレビュアーを務める。
http://reminders-project.org/